「投資」と「投機」の違い
「投資をしろ」と謳うビジネス書は多く、ネットニュースなどでも「投資」の特集がされます。 政府もNISAをスタートするなど投資・資産運用を強く推奨しています。
そんな中、「投資」と「投機」を混同して、投資のつもりで「投機」をしてしまい、 大損を被る人も多くいます。一攫千金を夢みて投資の本質を外し、ギャンブルをしてしまって時には借金すらをも背負います。 ここでは、「投資」と「投機」の違いを理解し、正しい「投資」を目指してもらいたいと思います。
「投資」とは?
投資とは、「利益を得る目的で事業などに資金を出すこと。比喩的に、将来の利益のために多額の金銭を投入すること。」 とグーグルは定義しています。
一般的に多くの人が「利益」を目的に投資をしていると思います。 しかし、投資の本質は「利益」ではありません。
この定義には投資の本質が少しだけ表れています。「事業など」という部分です。 事業とは、新たな価値を創造するために行うものです。
代表的な投資として、株式投資があります。株式とは、「事業をやりたいがお金がない」人のために、 投資家がお金を出して、代わりに会社の所有権(株券)をもらいます。事業がうまくいけば、そのお礼(配当金)を受け取るのです。
また、不動産投資も「ここに住みたいけど家がない」人のために、 投資家がお金を出して家を建て、不動産の所有権をもらいます。そして住む人からお礼(家賃)を受け取るのです。
株式の売買取引も、中古不動産も、「お金を出した」という立場を購入していますので、 「事業をやりたい人のためにお金を出した」「住みたい人のためにお金を出した」ということになります。
両者に共通するのは、「お金があれば新たな価値を創造できるのに、お金がない人」のためにお金を出している点です。 株式投資ではお金を出してもらうことでできる事業によって、新たな製品やサービスといった「価値」が創造されます。 不動産投資では同様に、住む家という「価値」が創造されます。
投資の本質は「新たな価値を創造すること」だと言うことができますね。 これはビジネスにおいても、投資においても最重要な認識になってきます。
「投機」とは?
投機とは、「不確実だが当たれば利益の大きい事をねらってする行為。」「市価の短期間の変動の差益だけをねらって行う売買取引。」 とグーグルは定義しています。これは「投機の本質」をよく表しています。
投機の定義には「事業」という言葉も「価値」という言葉もありません。
投機は専ら自分の利益のためだけに、株式や通貨・不動産・投資信託等を売買し、利ザヤを取ろうとするものです。 「マネーゲーム」と呼ばれたりもします。
これによく似た行為に「ギャンブル」があります。 例えばパチスロは「1/200」といった低確率で当選するボーナスを狙い、レバーを叩きます。 199/200の確率で「ハズレ」なわけですが、運よく1/200を引けば「大当たり」です。
確率なのでもちろん偏ります。1/200を運よく連続して引ければ「大勝ち」します。 逆にまったく引けなかったら「大負け」します。
「運任せ」で「偏り」を狙い「大きな利益を得る」というのは、投機とギャンブルが本質的に同じであることを意味します。
ここには「新たな価値を創造する」という視点はなく、「事業をやりたい人」のためでもなく、 「住みたい人」のためでもなく、ただ自分の利益だけを追求しているのが、投機の本質です。
「投資」と「投機」の違い
投資の本質は「新たな価値を創造すること」でした。一方で投機の本質は「自分の利益だけを追求すること」です。 ここには「誰のためか」という意識の差があります。
確かに表面的に見れば、「株式投資家」も「株式投機家」もやっていることは同じに見えます。 安いときに株式を買い、配当金をもらい、高いときに株式を売ります。
「不動産投資家」と「不動産投機家」もそうです。安いときに買い、家賃をもらい、高いときに売ります。 どんな投資・投機でもそうです。
しかし、投資と投機ではその「内面」が違います。
「株式投資家」は、その事業がもたらす「社会に対する恩恵」を重視します。 「この事業でつくられる製品は必ずみんなの役に立つ」「生活が便利になる」「みんなが楽しい気分になれる」 といった「社会貢献の夢」を抱いて株式を購入し、事業者を支援します。
「不動産投資家」も、その土地に家を建てたときの「社会に対する恩恵」を重視します。 「ここに家を建てたら便利だ」「生活が便利になる」「入居者が楽しい気分になれる」 といった「社会貢献の夢」を抱いて土地を購入し、住宅を建設するのです。
一方の「株式投機家」は、ただ「自分の利益」だけを考えています。 「値上がりすれば自分が儲かる」「配当金を増やしてほしい」「株価があがるような事業をしてほしい」 といった「自分だけの夢」を抱いて株式を購入し、配当金や売却益を狙います。
「不動産投機家」も、「自分の利益」だけを考えています。 「値上がりすれば自分が儲かる」「家賃をたくさん払ってほしい」「地価があがるような施設がほしい」 といった「自分だけの夢」を抱いて住宅を建て、家賃収入や売却益を狙います。
「投資」と「投機」の違いは、みんなのためにするか、自分のためだけにするかだと言うことができます。
投機は失敗する!
投機家がなにも不勉強でなんの苦労もせずお金を得ようとしている人だというつもりはありません。 配当金や売却益を得るには事業内容を検討する必要があり、「将来性がある」「成長可能性がある」 と判断して購入するわけです。また、価格変動の波や「投資心理学」すら学ぶ必要すらあります。
とはいっても、投資に比べて抜け落ちている重大なことがあります。
それは、「みんなのため」という視点です。
なにも自分の利益を図るのがダメだというわけではありません。お金を出すからにはそれ以上のリターンがほしいですし、 「お金を増やしたい」と思うのは誰でも同じことです。しかし、「みんなのためにならない事業」は儲かりません。
これは不動産を例にするのがわかりやすいです。
不動産投資で何より重視しなければならないのは、「入居者の利便性・快適性」です。 「駅まで徒歩30分かかるのに駐車場もない」「近くにスーパーもコンビニもない」 「部屋が狭すぎる」「設備がボロボロで汚い」なんて物件には住みたくないですよね。
それは、入居者にとっても同じことです。それでも入居者がいるのは、 「家賃が安いから仕方なしに住んでいる」に過ぎません。 その当たり前のことを忘れて、「利回り」と「価格」に踊らされて購入してしまう人がいます。
「仕方なしに」以外の価値がない不動産など、市場から淘汰されてしかるべきです。 駅の近くに最新設備を備えた新築アパートが建てば、そちらが人気になります。 不便な場所でも「駐車場を備えた広くて快適な家」が建てば、そちらが人気になります。
「入居者のため」を考えなかった不動産投機家は、家賃の下落と物件価格の下落に悩まされることになるのです。
これは、株式でも同じです。その企業が「本気」で「社会貢献」を目指している企業かどうかを調べず、 ただ「これから伸びそうな業界だ」というだけで株式を購入してしまえば、 その企業はイノベーションに乗り遅れてしまうかもしれません。
2000年代に家電メーカーに「投機」していた人たちも、 「日本製のテレビは余計な機能ばかりつけて価格を釣り上げている。お客さんの真の望みを無視している。」 と気づくことができなかったわけです。
こういう意味で、「みんなのため」という視点の抜け落ちた「投機」は失敗するのです。
バブルは「投機」から生まれる
記録されている中で最古のバブル経済とされているのが1630年代にオランダで起きた「チューリップバブル」です。
この時代、チューリップはトルコのオスマン帝国から輸入するしかありませんでした。 しかし当時のオスマン帝国はヨーロッパにとってまさに「恐怖」の国でした。 聖地のエルサレムは奪われたままで、突然オスマン軍がやってきては神聖ローマ帝国の首都を包囲してしまうなど、 とても怖い国だったのです。
ひとたび輸入が難しくなれば、チューリップの値段があがります。 1630年代のオランダでは「レアもの」になったチューリップがなんと、投機の対象になってしまったのです。
このときチューリップの球根は常軌を逸した価格の高騰があり、 「球根1個に対し、12エーカー(5ヘクタール)の土地との交換が申し出られた」という記録が残っているほどです。
さて、ここに「本当にチューリップが欲しい人」の視点があったでしょうか。 確実になかったでしょう。庭園にチューリップを植えてオシャレにしたい人が、 庭園を売ってまでたった1個のチューリップの球根を買うでしょうか?
1637年をピークにチューリップバブルは崩壊し、価格は大暴落したとのことです。
チューリップではありませんが、日本でも同じバブル経済が起きています。 1980年代のバブル経済ですね。これの爪痕は非常に深く刻まれ、いまだに日本人に「投資は怖い」という印象が根深い原因です。
さて、このバブル経済は1985年の「プラザ合意」に端を発します。 世界が協調してドル安誘導をすることで合意したもので、これを受けた日銀は「円高に苦しむ」と危惧し、 低金利政策を開始しました。
円高になって輸出品が値上がりするかと思ったら、ふたを開けてみれば円高のおかげで材料費が安くなり、 日本企業はたいした打撃を受けなかったのです。企業は儲かっていて、さらに低金利政策のおかげでお金が借りやすい状況になりました。 余ったお金が株式や不動産に怒涛のように流れ込んだのです。
このときはまだ株式市場も不動産市場も未成熟で、「みんなのため」という視点が投資家どころか銀行や証券会社でも抜け落ちていました。 そのため「本当にほしい人」を無視した価格の高騰があり、「会社を異常に高く評価しすぎた」「住みたい人が住めない」 といった現実が徐々に発覚して、バブル経済は崩壊しました。
バブルは「投機」から生まれるのです。そして、このとき大失敗したのも「みんなのため」を考えなかった「投機家」です。
「投機」ではなく「投資」をしよう!
「お客さんがなぜお金を払うのか」ということを考えてみましょう。
私はレストランにいったとき、単品300円のメロンソーダは注文しません。 グラス1杯分のメロンソーダに300円も価値があるとは感じないからです。 一方で、ドリンクバーが300円なら必ず注文します。「飲み放題の権利」には300円の価値があると感じるからです。
「みんなのため」を重視する「投資」は、「お客さんの視点」でその事業・その不動産を考えることができます。 お客さんが喜んでお金を払ってくれるような製品・サービスがあって初めて利益が出ます。
もしお客さんが「割高だ。こんなに払いたくないけど他に安いものがないからしょうがない。」という気分だったら、 ライバル企業が余計な機能を省いた格安バージョンを出したときに一気に利益がしぼんでしまいます。 ちょうどサムスン電子やLGに液晶テレビ事業をごっそりもっていかれた日本の家電メーカーのように。
不動産でも同じです。「他に空室がないからこの家で我慢するか…」で選ばれている物件は、 将来もっと便利で快適な新築アパートが建ったら、入居者をごっそりもっていかれてしまいます。
これが、投機が失敗する理由です。
(実は今問題になっている『空き家』はそのほとんどがオンボロで、旧耐震基準で建てられたものなので、 むしろ空き家で当然です。入居者は『仕方なし』ではなく『住みたい家』を選べるようになったのですから、 むしろ良い時代になったと思います。)
確かに株式投資も不動産投資も直接お客さんとやり取りすることはありません。 それは従業員や賃貸管理会社が代わりにやってくれます。とはいっても、お客さんを無視して商売は成り立ちません。 常に「この製品・サービスはお客さんが喜ぶだろうか」ということを考えなければなりません。
単に配当金・売却益を狙う「投機」ではなく、「社会に提供する価値」を重視する「投資」をしましょう。
不動産投資をもっと勉強しよう
不動産投資は勉強すればするほどリスクがゼロに近づいていきます。 私は不動産投資の本を40冊、ビジネス書を200冊読み、不動産投資セミナーに参加したり、 不動産会社に資料請求をしたり面談を申し込んだりして勉強をしました。
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