不動産投資とREITの比較
不動産投資と似た金融商品に「REIT(リート)」があります。 REITでは、投資家が投資法人に資金を拠出し、その資金で不動産投資を行うのですが、 それを証券化したものがREITと呼ばれます。「不動産投資信託」とも言えますね。
そこで、「自分でやる」不動産投資と、「プロに任せる」REITを比較してみましょう。
REITとは?
REITとは、不動産投資法人に出資し、代わりに運用してもらって家賃収入や売却益の配当金を受け取る金融商品です。
投資信託では株式や債券をプロに運用してもらい、その配当金や売却益を受け取りますが、 その不動産バージョンがREITだと言えます。 そのためREITは「不動産投資信託」とも呼ばれます。
また、REITは1960年代にアメリカで発祥した金融商品で、日本ではかなり遅れて2001年にスタートしました。 日本のREITを海外REITと区別してJ-REITと呼びます。
不動産投資のプロが運用しますので、REITに投資する投資家は一口数万円~数十万円の証券を購入すれば、 あとはプロがやってくれます。当然その分、投資信託で言う手数料や信託報酬にあたる経費が差し引かれますが、 利益の90%以上が投資家に配当されますのでREITは非常に利回りの良い金融商品です。
REITの分配金は半年に1回配られます。株式投資の配当金と同じように、 「3月・9月」と「6月・12月」に権利が確定し、その後3か月以内に口座に振り込まれます。
このように株式投資や投資信託と同じようなシステムですので投資初心者にもわかりやすく、 高い利回りが人気を集めてアメリカ・オーストラリア・フランスに次ぐ市場規模になっています。 流動性も高いため、現金にも戻しやすいというメリットがあります。
また投資法人は多数の物件を持っていますので、個人で1棟所有する場合に比べて、 多数の物件に投資しているのと同じ効果がありますから、リスク分散のメリットがあります。
REITは少額の投資で大家になれる?
REITは出資した投資法人・またはその投資法人が委託した業者が運用し、 その家賃収入を分配金として受け取ることができます。 簡単に言えば、みんなでお金を出し合って不動産投資をするようなものです。
REITの分配金利回りは2018年現在で3~6%ほどあり、株式配当金より高めです。 1口あたり安いものでは1万4000円ほど、高いものでも60万円ほどで買えますので、 不動産投資が何千万円も要するのに比べて非常に敷居が低いです。
分配金がもらえるだけでなく、REITが値上がりしたときに売却すれば売却益も発生します。 半年に1回得られる「インカムゲイン」に加えて、売却したときに得られる「キャピタルゲイン」もあるので、 かなり不動産投資に近い金融商品だと言えます。
ただし、「REITは少額の投資で大家になれる」というのは誤りです。
不動産投資のメリットはなんといっても「最終的に土地が残る」ことと「融資のレバレッジがかけられる」ことです。
REITでは土地は残りませんし、融資も使えません。さらに投資法人の運用には基本的に口を出せませんので、 「おいおいそんな物件買っちゃダメだろ!」と思ってもやめさせることはできず、 REITを売却するしかありません。
当然、敷地内に自販機を設置したり管理会社を変えたりして収益拡大を図るのも、 REITではできませんし、不動産の減価償却費で節税効果を狙うのもREITではできません。
そのため不動産投資のようで実は不動産投資とは異なり、 経営者の手腕にかける株式投資のほうに近いのがREITという金融商品です。
一方で確定申告や不動産の価値向上に興味がない・めんどうな人、 また融資を受けずに現金で投資したい人にはREITは向いている投資だと言えます。
不動産投資とREITの「投資利回り」での比較
先ほど不動産投資のメリットは「融資のレバレッジがかけられる」ことだと述べました。 これについて詳しく解説したいと思います。
不動産投資は、投資対象である土地と建物が実物ですので、銀行がお金を貸してくれます。 そこで融資を最大限利用して効率よく、収益拡大を図っていきます。
ここで投資利回りという概念を覚えてください。 投資利回りとは「出した自己資金」に対する「収入」の割合です。
例えば1億円の物件で、家賃収入が年間1000万円ある表面利回り10%の物件を買ったとしましょう。 (話を単純にするため経費や税金は考えないことにします)
現金で購入した場合、出した自己資金1億円に対して年間1000万円の収入がありますので、 投資利回りは10%ということになります。投下した資本を回収するのに10年かかるということですね。
一方で、自己資金1000万円で、残りの9000万円を融資で購入した場合はどうでしょうか。 利息2.5%で35年ローンを組んだ場合、年間の返済額は386万円になります。 この場合、家賃収入1000万円から386万円を引いた、614万円が手元に残る計算になります。
この614万円を出した自己資金1000万円で割ると、投資利回りは61.4%にもなります。
それだけではありません。現金で購入した場合は1棟で1億円を使い切ってしまいました。 一方で融資を受けた場合、9000万円が手元に残っています。 この9000万円をつかって追加で9棟、それぞれ同じ条件で融資を受けて投資すれば、年収は6140万円にもなります。
これが融資のレバレッジの強力さです。また2000年代~2012年ごろまでがそうであったように、 不動産価格がかなり割安な時期があり、そういうときは「自己資金0円、融資100%」で投資をすることも可能です。 この場合投資利回りは計算できません。自己資金を1円も出さずに収入を得るのですから、錬金術とすら言えます。
私の所有している物件は表面利回り6.1%程度の物件ですが、融資のレバレッジを使ったため、 投資利回りは14%あります。REITでは融資が使えませんので、現金投資のみで、 分配金利回り3~6%がそのまま投資利回りになります。
その差なんと8%以上!少ない自己資金で高い利回りを得ようと思えば、 REITではなく融資を受けて不動産を買ったほうがよっぽど稼げることがわかりますね。
恐るべきREITの裏話
不動産投資のよくある疑問に、「そんなに儲かるなら不動産会社がやるでしょ?」というものがあります。 一理あるどころか百理あります。まったくもってその通りです。
不動産投資って本当に儲かるの?で詳しく解説していますが、 現代の「家賃収入目的」の不動産投資は、企業規模でやるには利益が薄すぎます。 個人レベルでは十分な利益が出るのですが、会社を維持できるほど投資しようと思うと資金がいくらあっても足りません。
(たいていどの企業でも収益不動産は所有しており、 特にオーナー一族はほとんど収益不動産をもっていることも付け加えておきます。)
REITで不思議なのは、不動産投資家集団ではなく、不動産会社が投資法人を設立しているところです。 株式や債券の投資信託では投資のプロが設立した法人に出資しますよね? なぜ投資のプロではなく、不動産会社が設立するのでしょうか。
これには日本でREITが導入された経緯が関わっています。
REITはバブル崩壊後低迷する金融市場にあえぐ証券会社と、バブルの遺産を抱えた不動産会社がタッグを組んで推進しました。 言い分としては「不動産投資を小口化して庶民が投資しやすくして、金融市場の活性化を図ろう」というものでした。
しかし、現実には「手数料」を稼ぎたい証券会社と、「バブルの遺産」を処分したい不動産会社の利害が一致しただけでした。
考えてみれば、投資法人の設立母体が不動産会社なのはありえないことです。 子会社は議決権も人事権も握られていますので、親会社の言うことに逆らえませんよね。 それなのに、投資法人は不動産会社の実質子会社なのですから、とんでもない話です。
具体的にどういうことが起きるかというと
不動産会社「このクソ物件をうちから高く買え。断ったら・・・わかるな?」
投資法人「ひい」
「極端な話だな~」と思われるかもしれません。しかし、これは実際に起きた事件です。 「プロスペクト・レジデンシャル投資法人の資産運用会社に行政処分勧告」 という記事で公開されている事件です。
REITでは投資法人が購入する物件は、不動産鑑定士に価格の算出を依頼します。 公正な価格で物件を購入し、投資家に損をさせないためですね。 しかし、この事件ではプロスペクト(投資法人)は、プロスペクト(株)のご機嫌を伺い、 あえて鑑定士に高く見積もりをさせました。
これが「行政処分勧告」で済んでいるのですから驚きです。 親会社の利益のために投資家を裏切った重大事件なのに、上場廃止にすらなっていないのです。
親会社が不動産会社である投資法人は、だいたい親会社から不動産を購入しています。 果たして本当に最高の条件で購入しているかどうかは、わかりません。
それでもREITに投資したい場合は、なるべく不動産会社の投資法人を選ばないようにし、 投資法人の所有する物件情報をみて本当に投資の手腕があるのか見極める必要があります。
現物の不動産投資をする場合でも、REITに投資する場合でも、 不動産投資はどのみち猛勉強しなければならないのです。
不動産投資とREITの比較まとめ
それでは、不動産投資とREITのメリット・デメリットの比較をまとめましょう。
不動産投資 | REIT | |
表面利回り | 5~10% | 3~6% |
投資利回り | 5~100%以上 | 3~6% |
節税効果 | あり | なし |
流動性 | 低い | 高い |
リスク分散 | 低い | 高い |
借金リスク | あり | なし |
リスク管理 | できる | できない |
裏切りリスク | なし | あり |
どのメリット・デメリットを重視するかは人によると思いますので、 不動産投資とREITの両方が投資の選択肢にあるのは良いことだと思います。
REITはなんといっても「出資したお金」以上の損は絶対に出ないという大きなメリットがあり、 不動産投資は「勉強すればするほどリスクがゼロに近づく」という大きなメリットがあります。
逆にREITのリスク管理・裏切りリスクは完全に他人任せになってしまい、 不動産投資は失敗すれば借金が残るリスクがあります。
どちらを選ぶにしても、不動産投資の勉強はしなければなりません。 いきなり現物の不動産投資に手を出す前に、価格の安めなREITを購入してじっくり勉強してみるのも良いでしょう。
不動産投資をもっと勉強しよう
不動産投資は勉強すればするほどリスクがゼロに近づいていきます。 私は不動産投資の本を40冊、ビジネス書を200冊読み、不動産投資セミナーに参加したり、 不動産会社に資料請求をしたり面談を申し込んだりして勉強をしました。
セミナーや面談では、本やwebサイトに書けない秘密の話が満載です。メチャクチャ勉強になりました。 また、私は「年収500万円以上」「自己資金500万円」と言っていますが、それは市況次第です。 「入社3年」という条件すら、「2年でもいい」という銀行すらあるくらいです。
最新の環境なら、あなたも今すぐ不動産投資ができるかもしれません。 実際、私も「まだ無理だろ~」と思いながら資料請求して面談を受けた会社で、新築一棟木造アパートを購入できました。 セミナーや面談を受けることで、可能性が広がります。
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